Transistor Circuit

実験:トランジスタの動作


本実験では,トランジスタの動作を回路を作りながら学びます.

トランジスタ

小学校で豆電球と電池,スイッチを使った電気回路を学んだことが あると思います.また,高校で抵抗やコンデンサ,コイルを用いた 回路を学んだ人もいるかと思います.それらの回路動作は基本的に 「オームの法則」と 「キルヒホッフの法則」に基づいていま す.
オームの法則
R[Ω]の抵抗に電圧Vを印加したとき,抵抗を流れる電 流は印加した電圧に比例する.

V=RI

キルヒホッフの第1法則(電流則)
回路網の交点に流れ込む電流の代数和は0である.

I1+I2+...+In=0

キルヒホッフの第1法則(電圧則)
回路網の任意の閉じた回路に沿って1周するとき,起電力の代 数和は各部の電圧降下の代数和に等しい.ただし,1周する向きに 流れる電流を正とし,その向きに電流を流そうとする起電力を正と する.

V1+V2+...+Vm=E1+E2+...+En

抵抗,コンデンサ,コイルのような「受動素子」はこれらの法則の みで回路の動作が決まります. 一方,ダイオードやトランジスタと言った半導体は「能動素子」と 呼ばれ,上記の法則だけでは説明ができない動作をします. 例えば,一般的なダイオードは一方向にしか電流が流れない電子素 子です.印加した電圧と流れる電流が比例するオームの法則に従い ません. また,トランジスタは電流増幅素子で, 入力した電流に比例した電流を出力する電子素子です.

ここではトランジスタの電流増幅の様子を簡単な回路で確かめてみ ます. トランジスタは3端子の電子素子です.トランジスタには多くの種 類がありますが,今回使うNPNシリコントランジスタの端子にはB (ベース),C(コレクタ),E(エミッタ)という名前がついて います.ベースは電流の入力端子です.この端子から流れ込む電流 の定数倍の電流がコレクタからエミッタに流れます.
トランジスタが動作しているときは,ベースの電圧はエミッタより 0.6〜0.7V程度高い電位を保ちます.
この性質以外は受動素子の場合と同じ性質で動作します.


図1:NPNトランジスタ
さて,実際にトランジスタを動作させてみましょう. 簡単な回路例として,「おふろブザー」について考えます.
おふろブザーは,風呂桶の水が一定の水位まで到達すると ブザーで満水を知らせるものです.
ブザーを鳴らすには大きな電流が必要です.水をスイッチ代わりに しても大電流を流すことはできません.そこで,小さな電流を大き くする(増幅する)ためにトランジスタを使います.

図2にトランジスタを使った「おふろブザー」の回路を示します. 端子に水が接触するとベースに電源から微小電流が流れます.する とコレクタからエミッタに向けてそれより大きな電流が流れ,ブザー が鳴ります.


図2:おふろブザー回路
このように,トランジスタは小さな電流で大きな電流を制御する電 流制御する電子素子なのです.(電圧で電圧を制御する素子ではないことに 注意しましょう)

実験

実験に必要な部品

品名規格・型番個数
トランジスタ2SC18151
抵抗1kΩ(1/8W)1
ブザー1.5V用1
ラグ板8端子1
コップ水を入れたもの1
電線・半田---少々

実験1

電線の端の被覆をむき,それを満水を感知するスイッチとし,ブザー と安定化電源を(出力電圧を1.5[V]に設定)直列に接続した回路を 作成せよ. スイッチ間を短絡するとブザーが鳴動することを確かめよ.

実験2

スイッチとしての電線を水に浸してもブザーが鳴動しないことを確 かめよ.

実験3

トランジスタの電流増幅作用を確認するために,図2の「おふろブ ザー」回路を作成し,動作を確認せよ.

回路はラグ板上に半田付けして作成せよ.ただし,電源の出力電圧 を3[V]とせよ.設計(デザイン)は各自で行なって良い. ただし,素子間配線はできるだけ短くせよ(その ほうが見栄えも性能も良いことが知られている).

作成例


半田付けの方法


考察

  1. 半田付けの手順について説明せよ.またどのような状態の半田 付けが良いのか説明せよ.
  2. 抵抗素子は本体に付けられた色帯によってその値が示されてい る.色帯と抵抗値の関係を調べよ.
  3. 実験2で確かめたように水のような絶縁体であっても微小電流 が流れる.ゴムや大理石等の1メートル当たりの抵抗値はどれくら いか,調べよ.
  4. 水位センサとして利用している電線の端の被覆をむいたものの 形状はセンサの感度のから考えると重要である. どのような形状のものが最適と考えられるか,理由とともに答えよ.
  5. 実験3で作成した回路中にある1[kΩ]の抵抗は何のためにあ るのか,説明せよ.
    ヒント:回路はいつ苛酷な環境にさらされるかわ からない.また,人間は回路をどのように取り扱うかわからな い.設計者(デザイナ)は,どのようなことがあっても安全で壊れ にくい製品を作るための工夫が必要である.

2002.04.09.
fmiso@sccs.chukyo-u.ac.jp